わかちあいプロジェクトでは、現金収入向上による生活改善と、有機農法や森林農法の普及による森林保全を目的に、ミャンマーのカヤー州の2村とシャン州の1村で、コーヒー栽培支援のプロジェクトを2015年から行なっています。2018年1月、プロジェクトのモニタリングのため、コーヒー栽培の専門家である山本専門家と事業地を訪問しました。

成田空港からミャンマーのヤンゴンまで飛行機で8時間、ヤンゴンからロイコーという町まで国内線で1時間、さらにそこから車で1時間程度の場所に事業地が3ヶ所あります。

 

事業地① ペコン農園 

1つ目の事業地はペコン農園です。拠点としているロイコーから車で北西に1時間走ったところに位置しています。ペコン農園では1000本程のコーヒーの木に加え、マンゴーや樫の木、香りのするパフュームツリーと呼ばれる植物、マメ科の植物など、様々な植物を育てています。

コーヒーの木は日差しに弱いため、日陰ができるようにコーヒーよりも背の高い木を近くに植えています。この背の高い木のことをシェードツリーと言います。しかし、このシェードツリーがまだ充分に成長しておらず、影が少ないのが課題です。今後はシェードツリーの育成を進めると同時に、モミやワラを農園全体に敷くことで土を肥沃にしていく予定です。

ペコン農園

ここで働くジョメントウさんはお母さんと2人で12ヘクタールという広大なペコン農園を管理しています。コーヒーの木は順調に育ってはいますが、未だ実はつけておらず、これからも支援を必要としています。

ジョメントウさんの子どものテリトウくんがより良い社会を生きられるよう、現金収入が得られるコーヒー栽培をこの地域に広め、近隣で蔓延する麻薬を撲滅したいという志を持っています。

ジョメントウさん一家

 

事業地② ドービャク村

ドービャク村はロイコーから車で南に1時間走ったところに位置しています。ドービャク村には大きな農園はなく、組合員がそれぞれの家で裏庭栽培を行なっています。

コーヒーの成長は順調で、今年は約500kgの収穫が見込まれています。私が訪問したときも、収穫や実から豆を取り出す作業で忙しそうにしていました。

収穫中のメンバー

山本専門家の前回訪問時の指導の通り、コーヒー豆を乾燥させるための乾燥台を3つ作り、活用していることがわかりましたが、今年は特に雨が多く、乾燥に苦労している様子でした。そこで、山本専門家が雨対策のための指導を行い、ドービャク村の組合員たちは熱心にそれを聞いていました。

乾燥台

ドービャク村のコーヒー栽培組合のリーダーはウィルバさんと言います。毎日コーヒー豆を触っているだけあって非常に“マメ”な性格で、コーヒー豆の収穫量の記録を細かく取るのが得意です。ウィルバさんの大きなノートには、日付や収穫量がびっしりと書き込まれています。 

ウィルバさん

ウィルバさん

この村のみなさんは、わかちあいプロジェクトの団体名である“わかちあい”の意味を初めて知ったようで、ミャンマー語では“ウィミァチン”と言うことを教えてくれました。「私達が作っているのは“ウィミァチンコーヒー” なのか!」という話で盛り上がりました。“ウィミァチンコーヒー”という名前にするかどうかはわかりませんが、この村のコーヒーはわかちあいプロジェクトでも販売予定ですので、楽しみにお待ち下さい。

 

事業地③ ヤイブラ村 

ヤイブラ村は山の奥にあり、わかちあいプロジェクトによるコーヒー栽培プロジェクトの事業地の中では最も遠くにあります。ロイコーからは車で1時間半の距離です。組合員のそれぞれが、山の斜面にコーヒーの木を植えて育てています。

ヤイブラ村でも、山本専門家の指導をしっかりと守って栽培に取り組んでいることがわかりました。山の斜面を使って栽培しているため、栽培状況を見に行くのも一苦労ですが、そんな厳しい環境でも雑草を丁寧に取り除いていることがわかりました。

斜面に植えられたコーヒーの木

ヤイブラ村では収穫後の果肉を除去する加工を手作業で行なっていましたが、今回は果肉除去機を持っていき、使い方を説明しました。村のひとたちは初めて見る機械に興味津々で、我先にと機械を触って動かしていました。

果肉除去機

果肉除去機

また、山本専門家の指導のもと、果肉から取り出したコーヒー豆を乾燥させるための乾燥台を作りました。乾燥台を作るのは初めてで、専門家の説明を聞きながらの作業でしたが、建築作業はお手の物で、手際よく作業を進める姿が印象的でした。

作成中の乾燥台

このヤイブラ村のコーヒー栽培組合のリーダーがジョセフさんです。18人いるメンバーを束ねています。今回の果肉除去機のデモンストレーションも、乾燥台の建設も、ジョセフさんを中心にして行いました。

ジョセフさん

 

《現地コーディネーターの紹介》

最後に、事業に携わっている現地のコーディネーターを紹介します。

わかちあいプロジェクトの事業地では、現地コーディネーターであるミャーさんとティロさんの2人が活動しています。この2人はわかちあいプロジェクトとコーヒー農家さんとの橋渡し役をするだけでなく、3つの事業地を見て周り、栽培の技術指導や支援方針の立案も行います。

 

ミャーさん

ミャーさんは事業地を見て回るだけでなく、会計も担当しており、日本のスタッフからの細かい指示にも対応してくれています。

また、ミャーさんは英語が堪能で気配りが上手な方で、私の訪問中は私のお昼ごはんのことを毎日気にかけてくれました。そして、一緒にレストランへ行くと、地元料理の辛さに耐えきれずに咳き込む私に、いつも「辛くてごめんね」と謝ってくれます。

ミャーさんはいつも困っている人の力になりたいと考え、行動しています。「自分のことはどうでもいいから」と言っている姿が印象的でした。

ミャーさん(中央)

 

ティロさん

ティロさんは何でも自分で作れる笑顔が素敵な優しい方です。今回の訪問中にヤイブラ村に持って行った果肉除去機は、実はティロさんの手作りです。作り方を誰かに教わったわけではなく、写真を見ただけで真似して作ってしまったのです。

また、同じくヤイブラ村で制作した乾燥台も、ティロさんが山本専門家の英語を現地語に翻訳し、制作の手順や注意点をヤイブラ村のみなさんに説明してできたものです。

このように、ティロさんは日々農家の方と積極的に関わり、栽培技術や栽培環境の向上に努めています。

自作した果肉除去機を自慢げに見せるティロさん

 

今回の事業地訪問では、村人のそれぞれが努力してコーヒー栽培を行っているということがよくわかりました。コーディネーターのミャーさんは支援のために村々を歩き回り、同じくコーディネーターのティロさんは果肉除去機と乾燥台を作り、ペコン農園の管理者であるジョメントウさんは良い土を作ろうと専門家のアドバイスを熱心に聞き、ドービャク村では500kg分の収穫と加工を行い、ヤイブラ村では山岳地域の急斜面でのコーヒー栽培に挑んでいました。

わかちあいプロジェクトでは、今後もミャンマーでのコーヒー栽培のサポートを行なって参ります。みなさまの応援も、どうぞよろしくお願いいたします。